ー 花いちもんめ ー |
★ 己が意思を泣いて伝ゆるみどり児を背に揺らしつつミルクを作る ★ 四ヶ月の園児は我顔まじまじと見つめつつひたに乳を吸いおり ★ 見上げつつ乳吸う幼の丸き眼の中に笑みたる我の写りぬ ★ わが指を握りしめたるみどり児の五本の指の思わぬ力 ★ 寝返りを覚え初めし子幾度もおむつ替えいる我手を止むる ★ 入園の式に並びし幼な等の出合い新たに背筋を伸ばす ★ 園児らと同じ名札を胸に付けわが名大きく子等に伝ゆる ★ ふらふらと食事半ばをまどろめり新入園児は箸持ちしまま ★ 午睡時の静寂やぶり新しく入所せる児の泣き声聞こゆ ★ 双り子の園児の一人泣き出せば残る一人も泣き声合わす ★ 泣きじゃくる園児を背に負い揺り上げて花の周りを切なく巡る ★ 発熱を告げつつ若き母親はむずかる園児を我に託しぬ ★ 児を我に委ねて若き母親は小走りに長きスカート翻しゆく ★ わが背なにぐずり泣きつつ眠る児の時にひと際しゃくりあげ泣く ★ 差し出せる我手に抱かれ笑う児の二本の下歯少し覗けり ★ 参観に母の来ぬ子のいつになく羽目をはずして戯けてみする ★ 父の日に似顔絵贈ると父親の無き子もひたにクレヨンをぬる ★ 手を広げゴールに待ちいる我めがけ幼き園児の笑みて走りき ★ かがまりてあのねの続く児のはなし相槌打ちつつ時かけて聞く ★ お遊戯の稽古に飽きて二歳児は踊りの輪の中かけっこ始むる ★ おしろい花の黒き実割りて遊びおり居残り園児と暮れ行く庭に ★ 背をかがめ園児と共に見つめおり行列長き蟻の行方を ★ 園児らと遊びしボールを見失う落日早き秋の夕暮れ ★ かくれんぼ息をひそめて園児らと隠るる茂みにこおろぎの鳴く ★ お日様の匂いがすると園児等は干せる布団に顔を埋むる ★ 給食のアルミの碗にこびりつく飯つぶ寄する児は一心に ★ あくまでも嘘つき通す児に論す言葉とぎれてちさき肩抱く ★ 園児等のちさき寝息の聞こえ来る部屋にストーブ赤々と燃ゆる ★ 手作りの賀状を並びて投函す園児はポストの音確かめて ★ 中指の欠けたるままに生(あ)れし児の右手いずれの指もたくまし ★ 中指の欠けたる右手隠すなきままごと遊びの園児見守る ★ 障害を持つ子持たぬ子陽の下に手つなぎ遊ぶ花いちもんめ ★ 口すぼめ園児の飛ばすタンポポの綿毛は風に高く広がる |