― 春の雨降る ― |
★ 乱れ打つ鼓動は秘めて向けらるる非難を前に熱き茶を飲む ★ 夢破れ移り住みたる小倉にて再びの夢持ちて旅立つ ★ 肝心な事切り出せず向き合いて冷めたるコーヒー一息に飲む ★ 解決のめど付かぬまま別れ来て星なき空に細き月見る ★ 身に余るものは捨つべし音たてて青き柿の実足元へ落つ ★ 笑うまま泣きたるままに苔むせる羅漢に細き春の雨降る ★ しとど降る雨を集めて逆巻けり紫川は勢い増しつつ ★ 夏旅に誘うポスター雑踏の流れの中に歩を止めて見る ★ 頂の先は見えざる急坂を息切らしつつ夏雲めざす ★ 悔いひとつ持ちて見上ぐるビル街のいびつな空に昼の月浮く ★ チャップリンの笑いの後の淋しさよ画面を独り膝抱きて見る ★ 地雷踏み足失いし幼らの澄みたる瞳の声なき声聞く ★ 我が腕に頭を乗せて眠りたる猫の温とし秋の深まる ★ この猫もまた淋しきか払いても払いても尚膝に乗り来る ★ 花残る幼きキュウリを手にもげば命みずみずと棘の触れくる |